対人関係の教科書!心理学徹底解説

日常の中で心理学を活用する方法を解説します。

【身体的反応と感情の関係】 心理学の理論から考察へ

 突然、「身体的な反応を意図的に抑えることによって感情を抑えることは可能であるか?」という疑問がわきました。

 ある程度の範囲では可能だとされていますが、個人差はあると思います。

 

 この記事では、身体的反応と感情について心理学的視点から分析、解説していきます。

 

1 身体的反応と感情の関係性を研究した論説

 

ジェームズ=ランゲ説

 ・提唱者:ウィリアム・ジェームズ、カール・ランゲ

 ・内容:「末梢起源説」とも呼ばれているこの理論では、感情は身体的な反応に続いて生じるとされています。

 たとえば、「泣くから悲しい」「心臓がドキドキするから恐れる」といった具合です。
 身体的な変化が先にあり、その変化を脳が認識することで感情が生じるという考え方です。

 

キャノン=バード説

 ・提唱者:ウォルター・キャノン、フィリップ・バード

 ・内容:「中枢起源説」とも呼ばれているこの理論では、身体的反応と感情は同時に生じるとされています。

 ジェームズ=ランゲ説を批判し、脳(視床)が刺激を受け取ることで、身体反応と感情が並行して起こると説明しています。

 

シャクター=シンガーの二要因理論

 ・提唱者:スタンレー・シャクター、ジェローム・シンガー

 ・内容:この理論では、感情が生理的興奮と認知的評価の二つの要因から成り立つとされています。
 たとえば、心拍数が上がったときに「これは恐怖だ」と認知すれば恐怖を感じ、「興奮だ」と認知すれば楽しい感情になると説明します。

 

ラザルスの認知的評価理論

 ・提唱者:リチャード・ラザルス

 ・内容:この理論では、感情は刺激に対する認知的評価に基づいて生じるとされています。

 たとえば、「危険だ」と評価すれば恐怖が生じ、「成功だ」と評価すれば喜びが生じるという考え方です。
 認知の過程を重視しており、状況をどう捉えるかが感情に大きく影響するとされます。

 

プルチックの感情輪モデル

 ・提唱者:ロバート・プルチック

 ・内容:プルチックは、感情を基本的な8つのカテゴリー(喜び、信頼、恐れ、驚き、悲しみ、嫌悪、怒り、期待)に分類し、それらが組み合わさることでより複雑な感情が生まれるとしました。

 感情の関係を視覚的に示す「感情の輪」モデルが有名です。

 

ダマシオのソマティック・マーカー仮説

 ・提唱者:アントニオ・ダマシオ

 ・内容:感情が意思決定に重要な役割を果たすとする理論です。

 身体的な反応(ソマティック・マーカー)が意思決定の際に「警告」として働き、適切な選択を促すとされています。

 たとえば、不快な感情が特定の行動を避ける理由となる場合です。

 

 

 これらの理論は、それぞれ異なる観点から感情と心理の関係性を解釈しており、研究や実践で広く用いられています。

 どの理論も特定の状況や現象に当てはまるため、それぞれの強みと限界を理解することが重要です。

 

 前置きが長くなりましたが、さっそく本題に入ります。

 

2 身体的な反応を意図的に抑えることによって、感情を抑えることは可能か?

 

 結論から話すと、身体的な反応を意図的に抑えることで、感情をある程度軽減することは可能ですが、完全に制御することは難しいです。

 これを効果的に行うには、身体的アプローチと同時に認知的アプローチ(感情を引き起こす考え方を変える方法など)を組み合わせることが重要です。

 例えば、認知行動療法(CBT)やマインドフルネスの実践が有効です。

 

身体的反応を抑える方法と効果

身体的な反応を意図的に抑える方法には、以下のようなものがあります:

1. 呼吸法

 ・ゆっくりと深く呼吸することで、心拍数や血圧を下げ、リラックス状態を促すことができます。

 ・不安や恐怖感が軽減されることが多いです。

2. 筋弛緩法

 ・筋肉の緊張を緩めることで、身体のストレス反応を低減します。

 ・リラックス状態になることで、怒りや緊張感を抑えやすくなります。

3. 表情の制御

 ・笑顔を意図的に作ったり、怒りの表情を抑えたりすることで感情が和らぐことがあります。

 ・「ポジティブな表情が感情をポジティブに引き寄せる」と言われています。

4. 姿勢の調整

 ・姿勢を整えることで、自信を高める感情が生じる場合があります。

 ・逆に、猫背や縮こまった姿勢はネガティブな感情を強めることがあるとされています。

 

限界と注意点

 

 〇 感情は完全には抑えられない
 感情は身体的反応だけでなく、認知や記憶、状況の解釈など多くの要因によって引き起こされます。

 身体的反応を抑えても、感情が完全に消えるわけではありません。

 

 〇 抑えすぎると逆効果になる可能性
 感情を無理に抑え込むことで、心理的なストレスが増大し、後に爆発的に感情が溢れ出る「リバウンド現象」が起こる可能性があります。

 

 〇 根本的な問題解決にはならない
 身体的な反応を抑えることは一時的な感情の緩和に役立ちますが、感情の原因となる問題(ストレスの原因など)を解決しない限り、同じ感情が再び現れる可能性があります。

 

 職場や学校などの環境下では、できることが限定されてしまうので、上記のような方法を試してみるのも良いと思います。

 個人的には帰宅した直後の甘えてくる猫が一番ストレスには効いています。

 

帰宅した飼い主を見つめる琥珀と爆睡を決め込むモルガナ