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【バイスタンダー効果の意識改革】行動する重要性

 

人任せになってしまう心理

 

 

 

 

 

バイスタンダー効果とは?

 

キティ・ジェノヴィーズ事件から学ぶ心理学的考察

 


バイスタンダー効果(傍観者効果)とは何か?

 


 日常生活の中で、困っている人を見かけたことはないでしょうか?

 

 例えば、道端で人が倒れていたり、電車の中で具合が悪そうな人がいたりする場面です。

 

 しかし、多くの場合、私たちは「誰かが助けるだろう」と思い、行動を起こさないことがあります。

 

 このような心理現象をバイスタンダー効果(傍観者効果)」といいます。

 

 

 バイスタンダー効果とは、緊急事態が発生した際、周囲に多くの人がいるほど個々の人が援助行動を起こしにくくなる心理的傾向を指します。

 

 この現象は1964年にアメリカで起こった「キティ・ジェノヴィーズ事件」をきっかけに注目され、社会心理学の分野で広く研究されるようになりました。

 

 この記事では、バイスタンダー効果の心理学的背景、実験研究、実生活での実例、そしてこの効果を克服するための方法について詳しく解説します。

 

 

キティ・ジェノヴィーズ事件とバイスタンダー効果の誕生

 


キティ・ジェノヴィーズ事件の概要

 


 1964年3月13日未明、ニューヨーク市クイーンズ区のキューガーデン地区で、当時28歳の女性、キティ・ジェノヴィーズが自宅近くで襲撃され、命を落とす事件が発生しました。

 

 事件は約30分間続き、彼女は助けを求めて叫び声を上げましたが、最終的には誰にも助けられることなく亡くなりました。

 

 

 この事件が衝撃を与えたのは、周囲に38人もの目撃者がいたにもかかわらず、誰一人としてすぐに警察に通報しなかったと報じられたことです。

 

 この報道は、都市に住む人々の冷淡さの象徴として大きく取り上げられました。

 

 しかし、後の調査によると、実際には一部の住民が警察に通報しようとしたり、犯人を追い払ったりしたことも分かっています。

 

 それでも、多くの人々が積極的に介入しなかったのは事実であり、この事件は「なぜ多くの人が見ていたにもかかわらず、誰も助けなかったのか?」という疑問を生じさせました。

 

 

バイスタンダー効果の心理学的メカニズム

 


 キティ・ジェノヴィーズ事件をきっかけに、社会心理学者ジョン・ダーリーとビブ・ラタネは、バイスタンダー効果の研究を始めました。

 

 彼らの研究によると、バイスタンダー効果が生じる主な要因として以下の3つが挙げられます。

 

 

① 責任の分散

 


 「誰かが助けるだろう」と考えることで、個々の責任感が希薄になります。

 

 人が多くいるほど、個人の責任は薄まり、援助行動を起こしにくくなります。

 

 

② 多元的無知(集合的無知)

 


 周囲の人々が何もしていない様子を見て、「これは本当に緊急事態なのか?」と疑問に思うことがあります。

 

 結果的に、誰も行動を起こさない状態が生まれます。

 

 

③ 評価懸念

 


 「もし自分が行動を起こして、実は誤った対応だったら恥をかくのではないか?」という不安が、援助行動を妨げることがあります。

 

 特に他人の目を気にする場面では、この心理が強まります。

 

 

バイスタンダー効果を示す実験研究

 


煙の入った部屋実験

 


 ダーリーとラタネは、バイスタンダー効果を実験的に検証するため、「煙の入った部屋実験」を行いました。

 

 被験者を部屋に招き、アンケートに答えてもらっている最中に、部屋に白い煙を流し込みます。

 

 その際、被験者の反応を以下の条件で比較しました。

 

 

単独の被験者の場合:約75%がすぐに煙に気付き、行動を起こしました。


他の被験者(実験協力者)が無反応の場合:約10%しか行動を起こしませんでした。

 


 この結果から、多くの人が無関心を装うと、個々の被験者も「自分だけが過剰に反応しているのではないか?」と考え、行動を控える傾向があることが分かりました。

 

 

バイスタンダー効果の実例

 


① いじめ問題

 


 学校や職場でのいじめもバイスタンダー効果の典型的な例です。

 

 周囲の人々は「自分が介入しても無駄だ」「他の誰かが止めるだろう」と考え、結果的に誰も止めようとしません。

 

 

② 電車内のトラブル

 


 満員電車の中で、誰かが体調を崩したり、痴漢被害に遭っていたりする場面でも、多くの乗客が傍観者になりがちです。

 

 「誰かが助けるだろう」という心理が働くため、なかなか行動を起こしにくいのです。

 

 

③ 災害時の避難

 


 災害時にもバイスタンダー効果は発生します。

 

 火災や地震が発生しても、周囲が動かない限り「本当に避難すべきなのか?」と疑問に感じ、行動を起こさないことがあります。

 

 

バイスタンダー効果を克服する方法

 


① 自分が責任を持つ

 


 「誰かが助けるだろう」ではなく、「自分が助ける」と意識することが重要です。

 

 

② 明確な指示をする

 


 緊急時には「誰か助けてください」ではなく、「あなたが救急車を呼んでください」と具体的に指示すると、相手が行動を起こしやすくなります。

 

 

③ 援助行動の経験を増やす

 


 人は過去に援助行動を経験すると、次回も積極的に行動を起こしやすくなります。

 

 ボランティア活動や応急処置のトレーニンを受けることが効果的です。

 

 

まとめ

 


 バイスタンダー効果は、私たちが日常的に直面する心理現象です。

 

 しかし、意識的に行動を変えることで、この効果を克服することは可能です。

 

 キティ・ジェノヴィーズ事件のような悲劇を繰り返さないために、「誰かが助けるだろう」と考えるのではなく、「自分が行動しよう」という意識を持つことが、より良い社会を築く第一歩となるでしょう。